新規事業の営業とは、相手に興味を持つことだ。
― 新しいサービスは、売り込んではいけない ―

私が書きたいのは「新規事業の営業」です
「営業」という言葉を聞くと、皆さんはどんな仕事を思い浮かべるでしょうか。
商品の特徴を説明し、価格を提示し、契約をいただく。
そんなイメージを持つ方が多いかもしれません。
しかし、今回私が書きたいのは、そのような営業ではありません。
私が長年携わってきたのは、自ら立ち上げたサービスや、新しく開発したサービスを最初のお客様へ届ける営業です。
まだ世の中に知られていない。
価値も十分に伝わっていない。
成功するかどうかも分からない。
そんなサービスを、お客様と一緒に育てていく営業です。
だから私にとって営業とは、「売る仕事」ではありませんでした。
営業とは、お客様から学ぶ仕事だったのです。
私は、営業という仕事が苦手でした
実は若い頃の私は、営業という仕事にまったく良いイメージを持っていませんでした。
足しげく通い、話術で相手を説得し、
営業テクニックを駆使して契約を取る。
そんな世界だと思っていました。
だから自分には向いていない。そう思っていました。
ところが実際に営業を経験すると、その考えは大きく変わりました。
私が営業してきたのは、物流サービス。
保管、運送、作業。
システムも提案してきましたが、パッケージのソフトウェアを売るわけではありません。
どう使えば業務が改善されるのか。
どのような運用がその会社に合っているのか。
そこまで含めて提案しなければ価値になりません。
つまり、商品を売るというより、一緒に課題を解決する仕事だったのです。
無形サービスは「人」で選ばれる
物流サービスもシステムも、買う前に品質を確認することはできません。
実際に使ってみるまで分からない。
それなのにお客様は、使う前に意思決定をしなければなりません。
だから最後に判断されるのは、商品ではありません。
人です。
この人なら任せてもいい。
こういう人がいる会社ならば、一緒に仕事ができそうだ。
そう思っていただけるかどうかです。
営業とは、信頼を築く仕事なのだと私は思っています。
私は営業ではなく、接客を学んできました
以前勤めていた会社は、公益性の高いサービスを提供していました。
そこで教えられたのは、 「お客様第一主義」 でした。
困っている方の話を丁寧に聞く。
失礼のない対応をする。
クレームにも真摯に向き合う。
営業というより、接客です。
だから物流会社へ転職した時、「自分には営業経験がない」と思っていました。
「どうしてあなたが行くと、お客様は話してくれるの?」
物流会社で営業を始めた頃のことです。
ある会社を訪問し、お客様といろいろなお話をしました。
特別な営業トークをしたわけではありません。
お客様のお話をただ聞いて、会社へ戻って報告しただけです。
すると、当時の上司から驚かれました。
「どうしてあなたが行くと、お客様はそんなに話してくれるの?」
私には、意味が分かりませんでした。
営業としてはまだまだ未熟だと思っていましたし、特別なことをしたつもりもありません。
若い頃からやってきた接客を、そのまま必死に実践しただけだったからです。
「なんか話しやすくてさ」
気になった私は、後日その会社を再び訪問した時、思い切って聞いてみました。
「どうして、あんなに色々と話してくださったんですか?」
すると部長さんは笑いながら、
「なんか話しやすくてさ。」
「真剣に聞いてくれるし。」
そう答えてくれました。
私はその時、営業という仕事を少し理解できた気がしました。
営業とは、話すことではない。
相手に話していただくことなのだと。
興味があるから、質問が生まれる
営業の場で私は、お客様が何気なく話した一言を大切にしています。
「最近、人が集まらなくてね。」
「現場が回らないんですよ。」
「実は、そこが一番困っていて。」
そんな言葉を聞くと、自然にこう思います。
「それって、どうしてですか?」
「いつ頃からですか?」
「何かきっかけがあったのですか?」
これは、営業テクニックではありません。
相手のことをもっと知りたい。
もっと理解したい。
そう思うから自然に出てくる質問なのです。
私は、情報を集めるために質問しているのではありません。
相手に興味があるから質問するのです。
ここを勘違いすると、営業は尋問になってしまいます。
会社に戻ってから、セールスフォースに入れないといけないので、こんなことを聞いていませんか?
「予算はありますか?」
「導入時期は決まっていますか?」
「決裁者はどなたですか?」
もちろん、営業として必要な場面もあります。
しかし、それだけでは相手は心を開きません。
「この人は私のことを理解しようとしてくれている。」
そう感じた時に初めて、本音を話してくださるのだと思います。
新しいサービスは、売り込んではいけない
私の経験上、新規事業の営業では、売ろうとするほど売れません。
なぜなら、営業している自社も、お客様自身も、そのサービスの価値をまだ十分に理解できていないからです。
だから必要なのは説明ではありません。
対話です。教えてもらうことです。
教えてもらうために、最低限の説明をします。
相手の仕事を知る。
現場を知る。
課題を知る。
そして、その課題に対して一緒に考える。
また、自社のサービス企画案について、評価してもらい、一緒に考えてもらう。
「売る側」と「買う側」の対立ではありません。
一緒にサービスを作り上げる、「協力者」なのです。
そうして初めて、本当に必要なサービスへと育っていきます。
前回の記事で私は、「新規事業を動かすのは事業計画ではない。最初の顧客だ。」と書きました。
その最初の顧客を生み出すためにも、営業は欠かせません。
しかし、その営業は”売り込み”ではありません。
顧客を理解するための活動です。
私は今でも営業へ行く時、「売ろう」とはあまり思っていません。
「今日は何を教えていただけるだろう。」
そんな気持ちで訪問しています。
営業とは、相手に興味を持つことです。
相手を理解しようとすることです。
決して、「売込み」をしてはいけません。
もし「売込み」をしてしまうと、開かれようとしていた扉が閉じられます。
そして、二度と開かなくなります。
相手への関心が信頼を生み、信頼が新しい価値を生み、そして最初の顧客へとつながっていくのだと、私は信じています。
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