同じ4トン車でなぜ運賃が違う?~業界構造がもたらす不条理な実態と不可欠な対策~

運送業界の経営者の皆様、日々の運行管理および荷主への価格転嫁・条件改善交渉、本当にお疲れ様です。
業界内で長年ささやかれながらも、解決の糸口が見えない「奇妙な格差」があります。
それは、
「まったく同じ4トントラックを使い、まったく同じ距離を走っているのに、運ぶ『荷物』が違うだけで運賃が変わる」
という現実です。
例えば、一般的な食品や雑貨の店舗配送であれば、丸1日拘束されるチャーター便でも「1便2万円台」という厳し
い条件であるケースも珍しくありません。
しかし、同じ食品であっても高級ワインを運ぶとなれば運賃は跳ね上がります。
自動車部品や精密機械、医療機器なども、単価が上がりやすい貨物です。
これって、不条理ですよね。
同じ労力を払い、同じように運んでいるのに。
貨物が違うという理由だけで、単価が違うのが実態です。
貨物によって単価が変わる理由
なぜ、これほどにも貨物によって価格が変わるのでしょうか。
この理由を明らかにすれば、経営の方針が定まります。
実は、貨物によって単価が変わる理由は、公表されているデータから、簡単な計算で推測することができます。
すると、運送会社の交渉力や努力では如何ともしがたい、荷主側の業界構造が見えてきます。
ここでは、4トン車を例として順を追ってご説明しましょう。
4トン車は、何トンの貨物を積んでいる?
問題を紐解く前に、物流業界に詳しくない方のために、まずは基本を押さえましょう。
私たちは普段「4トン車」と呼んでいますが、この「4トン」とは車両の架装を含むものです。
つまり、4トンからパワーゲートやウイングなど架装物の重量を差し引く必要があります。
この差し引かれたものが「最大積載量」です。
車両によって異なりますが、4トン車の場合、最大積載量は2,800kg程度になっていることが多いのではないでしょうか。
さらにここから、パレット、カゴ台車などの物流機材の重量が差し引かれます。
ここでは、仮に最大積載量の1割(280kg)が物流機材の重量だとすると、残りの積載可能な重量は2,520kgです。
加えて、常に満載になっているかというと、そうとは限りません。
仮に平均積載率を70%だと仮定すると、2,520kg×70%=1,764kgとなります。
【4トン車が詰んでいる貨物の重量】
(最大積載量2,800kg - 物流機材※仮に1割で280kg) × 積載率70% = 1,764kg
このように、「4トン車」といいながら、実際に貨物を詰める重量は1,764kg程度ということになります。
この目減りした実質量に対して、荷主がどれだけの価値を認め、いくらの予算を割けるのかという話になります。
公表データが示す荷主の「支払い限界」を決める2つの要素
ここからは、公表データにもとづいて、なぜ業界によってこれほど運賃が違うのかを解きほぐしていきます。
ここで注目したいのは、
「貨物の経済的価値」と「売上高物流費比率」 です。
貨物の価格(1トンあたり価値)が大きく違う
経済産業省「工業統計調査」および国土交通省「貨物自動車運送統計年報」の出荷額・輸送トン数データから計算すると、1トンあたりの貨物価値が分かります。
ざっくり分類すると、下のようなデータが分かります。
<1トンあたりの価値>
・木材・木製品: 約5万円~10万円
・鉄鋼・金属一次製品: 約10万円~20万円
・食品・日用品: 約50万円
・自動車部品: 約250万円
・化粧品・化学薬品: 約300万円~600万円
・医薬品: 数千万円
同じ「1トン」であっても、運んでいる価値・価格は貨物によって全く違うのです。
売上高物流費比率の違い(原資の違い)
また、業界によって、物流にかけても良い予算の比率(売上高物流費比率)が異なります。
公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会(JILS)「2023年度 物流コスト調査報告書」によれば、下のようなデータが分かります。
<売上高物流費比率>
・木材・木製品: 約7.0%~9.5%
・鉄鋼・金属一次製品: 約6.0%~7.5%
・食品・日用品: 約5.5%~6.5%
・自動車部品: 約4.5%~5.0%
・化粧品・化学薬品: 約3.5%~4.5%
・医薬品: 約1.5%~2.5%
このような違いが生じるのは、容積あたりの元の製品価値の違いによるところが大きいでしょう。
たとえば、医薬品や化粧品のように「小さくて高価なもの」は、売上高に占める物流費の比率が下がることになります。
逆に、「嵩があって安いもの」は売上高物流費比率が高くなります。
物流にかけられる理論上のコスト
さて、上記のデータを掛け合わせてみます。
例えば、食品・日用品を例にしてみます。
1トンあたりの価値は50万円です。つまり、1kgあたり500円です。
先に見ましたように、4トン車で実際に詰める貨物の重量は1,764kgです。
そうすると、500円×1,764kg=882,000円となります。
4トン車が運んでいる貨物の勝ちです。
ここに、物流コスト許容率を掛けます。ここでは中央値を用いてみます。
すると、882,000円×6.0%=52,920円となります。
この数字は、4トン車1台あたりの物流費を意味します。
しかし、実際には、商流の中でここから様々なプレイヤーの作業や利益が差し引かれます。
3PLや元請けの管理マージン、物流センターの手数料(センターフィー)、荷役・仕分けの人件費などです。
そうすると、食品・日用品を運ぶならば、4トン車を1台走らせて2万円台にならざるを得ないのは納得ができます。
<4トン車1台あたりの理論上の物流費>
※下記の数字から管理マージンやセンターフィー・付帯作業費等が差し引かれる
※便宜上、データに幅のある場合は中央値を採用
・木材・木製品: 75,000円÷1000kg/t×1,764kg×8.25%=10,915円
・鉄鋼・金属一次製品: 150,000円÷1000kg/t×1,764kg×6.75%=17,861円
・食品・日用品: 500,000円÷1000kg/t×1,764kg×6.0%=52,920円
・自動車部品: 2,500,000円÷1000kg/t×1,764kg×4.75%=209,475円
・化粧品・化学薬品: 4,500,000円÷1000kg/t×1,764kg×4.0%=317,520円
・医薬品: 仮に10,000,000円÷1000kg/t×1,764kg×2.0%=352,800円
いかがでしょうか?
この数字が運送会社に支払われる物流費の上限値になってしまうことは、ご理解を頂けると思います。
業界平均値を用いたり、一定の仮定条件を置いていますので必ずしも正確ではありませんが、このような構造なのです。
この構造がある限り、交渉をしても価格が上がりにくいのもやむを得ない側面があります。
構造上の必然といっても良いでしょう。
天井が高い市場への「新規開拓」の重要性
ここまで読んでいただいた皆様には、ご理解をいただけたと思います。
自社の努力とは関係がなく、業界構造によって運賃が決まってきます。
どういう業界の貨物を運ぶかによって、会社の利益は決まってくるのです。
多くの運送会社では、荷主や元請事業者に対する価格転嫁交渉に取り組まれているでしょう。
しかし、一定の貨物を運ぶ以上は、上記に記載さいたような業界構造による上限値は突き破ることはできません。
「4t車だから、1便あたり25,000円が相場だ」というのは、あなたが今いる荷主業界だけの話かもしれません。
あなたの会社の素晴らしいドライバー、丁寧な運転技術が報われるためには、新しい業界の荷主を探す新規開拓営業を行うことが必要です。
業界を変えれば、車両や装備を大きく変えなくとも単価が変わります。
そのためには、経営者が積極的に新規開拓を進めることが必要です。
経営者が今すぐ取るべきアクション
ドライバーの人員不足、人件費の上昇、燃料・資材価格の高騰が続くなか、2028年には運送業の免許更新制がスタートします。
それに備えて今から原価把握・価格転嫁交渉を行うことは重要です。
しかし、「それで乗り切れるのか?」という問いを常に心に持ってください。
そして、「乗り切れない」と確信したならば、迷うことなく行動に移しましょう。
自社の価値を正当に評価し、高い予算を支払う能力を持つ新しい市場へと、自らアプローチを仕掛ける「新規取引先開拓」に。
待ちの姿勢を捨て、天井の高い業界へ一歩を踏み出しましょう。
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