戦国大名に学ぶ! 新規事業・新サービスのあり方

なぜ今、戦国大名の経営戦略に学ぶべきか?
新規事業や新サービスの重要性については、これまでのブログでもたびたびお伝えしてきました。
市場の変化が激しい今、既存事業だけに依存する経営はどうしてもリスクが高い。
だからこそ、新しい柱を育てていくことが欠かせません。
とはいえ、「誰を参考にすればいいのか?」という問題があります。
- 近年の企業経営者:成功の裏側にある弱みは語られず、美談や演出が混ざり、客観性が失われがちです。
- 昭和の経営者:高度経済成長という“右肩上がりのエスカレーター”が存在した時代であり、市場が拡大し続けたあの空気感は、いまの中小企業には通用しません。
では、誰を手本にすればいいのか。
私の結論はこうです。
最も参考になるのは、戦国大名の経営です。
戦国大名は「国家規模の経営者」だった
戦国時代の大名は、いまの経営者以上にハードな環境で意思決定をしていました。
政治、経済、社会、軍事のすべてに責任を負う“究極の経営者”です。
一度の判断ミスが、国の崩壊や他国への併呑につながる。
事業撤退のような温い話ではなく、「滅亡」です。
そんな極限状態で生き残った戦国大名たちは、現状の延長線で生き残ることを諦め、常に新しい手を打ち続けました。
しかもその新しい手というのは、
- “広い道”ではなく、ごく細いニッチな道を見つけ出し、そこに徹底特化する戦略だったのです。
弱小大名であればあるほど、その傾向は強い。
自国の資源や兵力で、正面からは勝てないからです。
だからこそ、「奇襲」という形で狭い道を抜ける。
これは、中小企業が新規事業・新サービスに取り組む姿勢と非常に似ています。
戦国三大奇襲が教えてくれること
あなたの会社も、大手物流会社や巨大プラットフォームと正面から戦って勝てるわけではありません。
中小企業が成功しているケースのほぼすべては、「狭い市場」と「自社固有の強み」の掛け算です。
ここで、戦国三大奇襲と言われる代表的な戦を、この視点で取り上げてみましょう。
| 戦い | 主な戦略 | 経営のヒント |
| ① 北条氏康「河越夜戦」 | 大軍に包囲された絶望的な状況で、敵軍の慢心を読み切り、夜襲という最も**「狭いタイミング」**で一気に勝負を決めた。 | 相手の弱み(組織の隙)を一点突破する戦略。 |
| ② 毛利元就「厳島の戦い」 | 敢えて自軍の本拠地ではなく、**“狭い厳島”**に敵を誘い込み、地の利と天候を研究し、少数精鋭で勝利した。 | 自分の土俵(戦場)に相手を引きずり込む設計。 |
| ③ 織田信長「桶狭間の戦い」 | 圧倒的不利な状況で、地形・天候・兵力差・敵の心理のすべてを読み切り、**「ここしかない」**という瞬間を自らつくって本陣を奇襲した。 | 勝てる状況を自らデザインする執念と洞察力。 |
戦国思考を現代の新規事業に置き換える4つのステップ
これらの三例に共通するのは、「正面衝突を避け、小さい勢力でも勝てるフィールドを自らつくる」という点です。
ここからは、戦国思考をいまの物流・作業請負業の新規事業に置き換えてみましょう。
1. 「本気で勝てる狭い市場(ニッチ)」を選ぶ
戦国大名は、自国の地形・人口・文化・外交を徹底分析したうえで戦略を決めました。
現代の企業に置き換えると、小さくても“勝ち筋のある領域”を選ぶということです。
- 極めて限定的な業務の代行サービス
- 物流現場の特定の工程だけに寄せた改善サービス
- 特定クライアント・特定の荷姿に特化した請負サービス
- ラストワンマイルの特殊エリア(例:離島、高層ビル群など)
こうした“ニッチの片隅”から始めるのが正攻法です。
2. 「自社の強み」を徹底的に見抜く
元就も信長も、勝てる強みを理解していたからこそ勝てる戦しかしていません。
あなたの会社にも、必ず独自の強みがあります。
- 特定クライアントの深い理解と信頼関係
- 特殊な現場経験やノウハウ(例:重量物、精密機器の扱い)
- エリア特有の人脈や土地勘
- 独自の業務フローや現場改善の実績
これらを棚卸しし、**「勝てる土俵」**を決めることこそが戦略です。
3. 「奇襲」を仕掛ける=大手の“組織の壁”の隙間を狙う
大手企業は動きが遅い。
それは、彼らが弱いのではなく、“組織が大きい”からです。
多段式の稟議、段取り、縦割り、現場感覚との乖離。
これらが、大手の弱点、つまり**「死角」**となります。
中小企業の強みは、意思決定の速さ、小さく試せる機動力、現場と経営が近いこと。
奇襲とは、この”大手の死角”に、現場の機動力で、速やかに強みを突き立てることです。
具体的には、大手では実現できない夜間・早朝の特殊対応や、現場改善を伴う請負契約など。
また、同じ機能を異質のフィールドに適用すること(例えば、法人向け倉庫を消費者向けの生活支援サービスにする)も「奇襲」に当たります。
4. 「戦う場所」を自分でつくる
厳島の戦いは、毛利元就が“地形”をデザインした戦です。
**「自社独自の戦場」**をつくって、局地戦に持ち込んで、勝ち筋を生みます。
- クライアントとの深い信頼関係によるカスタム対応
- 業務の複雑さ(大手では割に合わない、手間のかかる細分化された課題)
- エリア特化
こうした独自の戦場をデザインできれば、競合は容易に参入できなくなります。
まとめ:戦国大名に学べば、「中小企業が勝つ道」は見えてくる
戦国大名の戦略を見ると、いまの中小企業が直面する課題と驚くほど似ていることに気づきます。
- 資源が限られている
- 大手に正面からは勝てない
- だからこそ「狭い道」で勝負する
新規事業とは、大規模投資のことではなく、小さな領域に、自社の強みを鋭く刺す行為です。
そしてその“狭い道の選び方”こそが、まさに戦国大名の知恵そのものなのです。
「自社の強みをどこに刺すべきか?」
もしその**「狭い道の選び方」でお悩みでしたら、戦国大名の戦略をヒントにした”貴社独自のニッチ戦略”**を一緒に考えましょう。
次回の記事では、北条早雲の統治術から、「新規事業を成功させるための人材登用術」を解説します。
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