小さな組織が確実に新規事業を成功させる、4つのステップ

「新規事業」は特別な人のものではない

「新規事業」と聞くと、何だか特別な響きがあるかもしれません。

社会の変化をいち早く察知して、これから生まれるであろうニーズを先取りする――。
あるいは、今話題のテクノロジーを使って、これまでにできなかったことを可能にする――。

たしかに、そうした新規事業は数多く存在します。
ですが、そういった取り組みは、主に大企業や資金豊富なスタートアップが担う領域でしょう。

彼らには、失敗を前提とした“リスクマネー”があります。
挑戦してダメでも「次」がある。その前提で動いています。

一方で、私たち中小企業はどうでしょうか。

失敗してしまったら、それだけで会社の屋台骨が揺らぐような状況になるかもしれません。
そんな状況で、大胆な勝負を仕掛けることは、なかなか難しいものです。

私の失敗談:技術先行の落とし穴

ここで少し、私自身の失敗の経験をお話しさせてください。

以前、私は「AI-OCR」という技術に注目して、新しいサービスを立ち上げたことがありました。
ちょうどそのころ、AIを活用した文字認識技術が世の中に出始めていて、「これは面白い!」と直感的に感じました。

「この技術を使って、なにかできないか?」と構想を練り始め、企画をまとめて開発を始めました。

ところが、リリースにこぎつけたときには、すでに市場にはエンジニアリソースの豊富な多くの競合サービスが出そろっていました。
「早く動いたつもり」だったのですが、自社のリソースでは「技術優位」のスピードについていけない状態だったのです。

自社が勝負できない土俵に踏み出してしまった。

これは、痛い教訓でした。

中小企業がとるべき戦略:確実な「小さな成功」

このような経験を踏まえると、私たち中小企業にとって必要なのは、「小さな成功を確実に手にする」ことではないかと思います。

それは、「低リスク×低ゲイン」な新規事業

地味で構いません。小さな規模で構いません。
でも、確実性が高いこと。実現できること。

そして、それを少しずつ大きく育てていく。
中小企業は、そういう積み上げ型の成長に向いているはずです。

では、どうすればその「小さな成功」を確実に手にできるのでしょうか?

答えは、意外とシンプルです。

成功している他社を、観察して、真似すること。

「えっ、それってパクリじゃないの?」と疑問に思われた方もいるかもしれません。
でも、そうではありません。

他社がすでに取り組んでいるということは、「ニーズが存在する証拠」です。
その成功事例をよく観察し、自分たちなりのアレンジを加えて展開すること。
これは決してパクリではなく、「再構築」や「応用」と呼ぶべきものです。

成功を手にする4つのステップ

それでは、ここからは「小さな成功」を手にするための、具体的な4つのステップをご紹介していきます。


STEP1:隠れた“渋い課題”を見つける

まずは、特定の人たちしか気づいていない課題を見つけることが出発点です。

たとえば、ある業界の中でも、さらに限られた役割の人しか直面していないような課題。
その課題は、一見すると小さく見えるかもしれませんが、当事者にとっては深刻だったりします。

私のAI-OCRの経験を振り返れば、「AI-OCR」そのものではなく、たとえば“手書きのFAXで届く発注書をどうにかしたい”という、特定業務の非常にニッチな困りごとに目を向けていれば、競合も少なく、深いニーズをとらえられたかもしれません。

ポイントは、「我慢されている小さな不便」を探すこと。
その“渋い課題”にこそ、チャンスが眠っています。


STEP2:すでに誰かが解決している事例を探す

次に、その課題や似たような課題を、すでに解決しようとしている他社の事例を探します。

いまは本当に便利な時代です。検索すれば、大小さまざまな事業者の取り組みが見つかります。
SNS、業界紙、事例集、YouTube、ホームページ…使える情報はたくさんあります。

ここで探す事例は、別に「同じ業界」や「同じ地域」である必要はありません。
似たような構造の課題を解決している会社であれば、十分に参考になります。


STEP3:事例を徹底的に観察する

見つけた他社事例は、とにかく丁寧に観察することが大切です。

・その会社は、なぜこのサービスを始めたのか?
・どんな人に向けているのか?
・どんな言葉で訴求しているか?
・価格帯は?
・どんな機能が喜ばれているか?
・サービスの変遷や進化の歴史は?

ホームページにある「社長あいさつ」や「沿革」、「想い」などのページには、想像以上にたくさんのヒントが詰まっています。

重要なのは、「考え方」や「哲学」に注目することです。
そうすることで、そのサービスの「本質」が見えてきます。


STEP4:「自分たちだったらもっとこうする」を考える

最後のステップです。
観察した事例をもとに、

「自分たちだったら、もっとこうするのに」

という発想を膨らませていきます。

・対象とするターゲット層を少し変える
・機能をシンプルに絞る
・別の商材と組み合わせる
・表現や訴求方法をローカルに寄せる
・価格設定をもっと柔軟にする

など、自分たちの強みや環境にあわせて“再構築”していくのです。


「小さな成功」を“確実に”つかむ方法

いかがでしたか?

これまで見てきたように、
✔ 見過ごされがちな、隠れた小さな渋い課題を見つけて
✔ 似たような事例を観察して
✔ 自分たちのアレンジを加えてマイナーチェンジして実行する

――これだけでも、立派な新規事業のプロセスです。

格好いい言い方をすれば、これこそが、中小企業における**「模倣からのイノベーション」**です。

派手さはないかもしれません。
ですが、このアプローチこそ、中小企業が「確実に」新規事業を成功させる王道だと、私は信じています。

大きな投資も、最先端の技術も、奇抜なアイデアも必要ありません。

必要なのは、「着実に一歩を踏み出す」こと。
そして、それを「続ける」こと。

小さくても「続ける」こと。
これは、意外にも大企業にはできない、中小企業の大きな強みだと私は思います。

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