【2028年までに施行予定】運送業の免許更新制度とは?

5年ごとの許可更新と財務要件が経営に与える影響を解説

日本の物流業界は、いわゆる「2024年問題」により大きな転換点を迎えています。
しかし、運送業の経営者が本当に直視すべき変化は、労働時間規制だけではありません。

2025年6月に成立した改正貨物自動車運送事業法により、
運送業の許可制度は、これまでの「一度取れば継続できる制度」から、定期的に経営の健全性が問われる制度へと大きく舵を切りました。

本記事では、

  • 運送業の免許更新制度の全体像
  • 更新時に重視される財務要件
  • 経営にどのような影響が出るのか
  • 今、経営者が打つべき現実的な対策

を、経営者目線で整理します。


運送業の免許更新制度とは?【法改正の全体像】

今回の法改正の本質は、「事業者の質を維持・選別する仕組み」の導入だといえます。

これまでの運送業は、

  • 許可取得後は
  • 重大な違反や事故を起こさない限り
  • 原則として事業を継続できる

という制度設計でした。

しかし今後は、一定期間ごとに「事業継続に足る会社かどうか」を国が確認する仕組みへと変わります。


これまでこれから
許可を取れば原則として「恒久」定期的な更新が前提
問題が起きなければ、許可は継続基準未達なら更新不可
取消は例外的「更新不可」が事業継続リスク

この背景には、働き方改革や賃上げがあります。
荷主や元請け企業への規制を強めてきた一方で、それでも目指すところを達成できない会社には退場処分を考えているというところでしょうか。
(小規模な物流会社の統合を促すという面もあるように感じます)

更新制のスケジュール(現時点)

  • 2025年:改正貨物自動車運送事業法 成立
  • 公布から3年以内に施行予定
  • 2025〜2028年頃から運用開始と見込まれています

なお、更新周期は「5年ごと」が有力視されていますが、詳細(周期・経過措置・審査方法)は、今後の政省令・通達で最終確定します。

ただ、全事業者が何らかの形で審査対象になる方向性はほぼ確実です。


更新審査の3本柱|特に重要な「財務要件」

免許更新時にチェックされる項目は、主に次の3点です。

  1. 安全管理体制
     事故歴、行政処分歴、Gマーク取得状況 など
  2. 労働環境・コンプライアンス
     改善基準告示の遵守、社会保険加入、労働時間管理
  3. 財務的基礎

ここで注目すべきは、3の「財務要件」です。
この要件が課されるインパクトは、極めて大きいものがあります。

なぜ「財務」がここまで重視されるのか

国の考え方は明確です。

財務が不安定な会社は、
・安全投資ができない
・人を守れない
・結果として事故や違反を招く

つまり、財務状況は安全・労務の前提条件と位置づけられています。


想定される財務基準(※予測)

現時点で正式基準は未公表です。
ただ、先行して更新制が導入された貸切バス業界では、次のような基準があります。

  • 直近1期で債務超過でない
  • 直近3期連続で営業赤字でない

運送業でも、同等または近い基準が設けられる可能性が高いと考えられています。

つまり、「赤字でも資金繰りが回っていればOK」という時代は終わる、ということです。


経営への具体的影響|小規模な運送会社でも経営の質が問われる時代へ

この免許更新制度は、運送会社の経営構造そのものに影響します。


① 「隠れ赤字企業」の可視化と淘汰のリスク

  • 借入で赤字を補填してキャッシュを確保
  • 利益が出ていないが事業は継続

こうした会社は、更新審査で一気に表に出されることになります。

つまり、黒字化は努力目標ではなく「事業継続条件」になるということです。


② 多重下請け構造自体のリスク

「実運送体制管理簿」の義務化により、

  • 手配だけ
  • 実運送を持たない
  • 利益率の薄い多重構造

は、管理コストとリスクに見合わなくなります。

いわゆる「水屋」は、従前の薄い利益率では、管理コストと経営リスクを負担しにくくなります。


従来今後
下請け前提で成立実運送重視
利益率が低くても継続財務的に維持不可
管理は曖昧管理責任が明確化

許可を維持するための最優先課題|価格転嫁交渉

財務基準を満たすために、真っ先にやるべきことは「価格転嫁交渉」です。


価格交渉は「経営判断」ではなく「経営者の責任」

2026年1月施行の改正下請法(取適法)では、

  • 労務費
  • 燃料費
  • その他コスト上昇

を踏まえた協議を拒否すること自体が法的に禁止されました。

大事なことは、この禁止行為はあくまで「協議を求めたにもかかわらず」という前提があることです。

「交渉しない」という選択は、改正下請法の適用を放棄し、免許更新リスクを自ら高める行為になりかねません。


交渉を成功させる3つの実務ポイント

  1. 原価の可視化
     「いくらで走らなければ更新基準を満たせないか」を数値で示す
     原価割れの取引はどれか? どれくらい原価割れしているのか? これを正確に把握する必要があります。
  2. 法改正を交渉材料にする
     感情論ではなく「制度上の制約」として説明する
     これまでは「ダメ元」で交渉してきたかもしれませんが、今後は「希望額が通らないと経営が継続できない」おそれがあるわけです。
  3. 不採算取引の整理
     全取引先を守ろうとすれば、会社そのものが守れなくなる
     「長い付き合いだから」「売上が大きいから」と放置していては、許可継続ができなくなるおそれがあります。
     妥結困難な取引先については、素早く見極めていく必要があります。 
     当然、その代替となる取引を確保する営業も並行して進めなければなりません。

あなたの会社は大丈夫か?簡易セルフチェック

以下に2つ以上当てはまる場合、更新時に財務面で指摘される可能性があります。

  • 直近3期で赤字が2期以上ある
  • 借入返済を新規借入で回している
  • 運賃交渉を3年以上していない
  • 実運送比率が低く、手配中心である

「まだ大丈夫」ではなく「今から間に合うか」が判断軸です。


まとめ|免許更新制度を「強い会社」への転換点に

免許更新制度の導入は、運送業界にとって厳しい制度です。
しかし同時に、

  • 適正運賃を受け取り
  • 法令を守り
  • まじめに経営している会社が評価される

構造への転換でもあります。

価格転嫁と財務改善は、「攻め」ではなく生き残るための前提条件です。
この基盤を固めた先にこそ、次の成長戦略があります。


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