挑む人の前にしか、壁は現れない

なぜ人は「変わること」を避けるのか
今回は、少しマインドセット的な話をしようと思います。
新規事業も、新サービスの開発も、本質的には「現状を変える試み」です。
現状に何の不満もなければ、変える必要などありません。
リスクを負ってまで、新しいことに手を出す理由がないからです。
けれども、現状に課題がある、限界がある。
あるいはこれからの未来を見据えたときに「このままではいけない」と思うからこそ、人や組織は変わろうとします。
しかし、実際には多くの人が「変化」を回避します。
これは「現状維持バイアス」とも呼ばれる、心理的な傾向です。
人は慣れ親しんだ状況に安心感を持ち、たとえそこに問題があったとしても、不確実な未来よりも、目の前の安定を選ぼうとするのです。
「このままではまずい」と感じていながらも、それを見ないふりをしてしまう。
そして、少しずつ確実に衰退の方向に向かっているのに、その変化を直視できないまま、時間だけが過ぎていく。
これが、多くの組織に共通して見られる現象です。
でも、それを変えようとする人がいます。
自らの意思で、変化の道を選び、現状を壊してでも新しい挑戦を始める人です。
壁が現れたら「おめでとう」
変わろうとすると、必ず何かしらの壁にぶつかります。
思い通りにいかないこと、反対されること、計画通りに進まないこと。
ときには周囲からの理解が得られず、孤立感を覚えることもあるでしょう。
でも、ここでひとつ、重要な視点があります。
「壁が現れる」ということは、挑んでいる証拠だということ。
挑戦しない人、現状の中にとどまっている人には、壁は現れません。
いつもの日常の中には、越えなければならない障壁も、衝突も、軋轢もないのです。
だから、壁にぶつかった瞬間は、こう言ってもいい。
「おめでとう。あなたは挑んでいる人だ。」
壁を越えた先には、必ず違う景色があります。
そしてその景色は、現状にとどまっていた人には決して見えないものです。
壁の向こうは、一段高い地面
私の実体験でも、新しいことに挑もうとしたときに、さまざまな壁に出くわしてきました。
社内の理解を得る難しさ、顧客ニーズの誤認、技術の壁、予算の壁、スピードの壁。
逃げたくなるような大きな壁でした。
でも、そこであきらめなかったことで見えてきたものがあります。
それは、「壁の向こうは、少し高くなっている」ということです。
高い壁を乗り越えるためには、自分自身の能力を高める必要があります。
チームの協力が必要になります。
外部の知恵や資源を取り入れる必要もあります。
つまり、壁を越える過程そのものが、次のレベルへ進むための成長をもたらすのです。
一つの壁を越えるたびに、組織として、個人としての「レベル」が上がっていく。
これはゲームのようなものです。
壁=レベルアップのチャンス。
もちろん、一度越えたら終わりではありません。
また次の壁が現れます。
でも、それは「さらに先に進んだ」という証でもあるのです。
現状維持こそが、最大のリスク
ここで、もう一度立ち返って考えてみたいのが、「現状維持」の危うさです。
現状維持をしていると、確かに当面のリスクはないように見えます。
でも、気づかぬうちに、じわじわと外部環境は変わっていきます。
顧客ニーズは変化し、競合の動きは加速し、技術は進化し、社会構造も変わっていきます。
その変化に気づいたときには、もう手遅れかもしれません。
「いま、特に大きな問題は起きていない」
「それなりにうまくいっている」
この言葉こそが、思考停止を招く危険なサインです。
小さな違和感、小さな不満、小さな兆し。
それに敏感に反応し、「なぜだろう?」「もっと良くできないか?」と考える力こそが、変化への第一歩になります。
百尺竿頭一歩を進む
禅語に「百尺竿頭一歩を進む」という言葉があります。
百尺(約30メートル)の竿の先端に立った人が、さらに一歩を踏み出す。
そこにはもう、足場も何もないかもしれない。
それでも、一歩を進める。
これは、「どれだけ到達しても、なおも進もうとする姿勢」を表す言葉です。
挑戦には終わりがありません。
越えたと思ったら、また次の壁が出てきます。
それでも歩みを止めず、常に「一歩先」を目指す姿勢が、組織を進化させ続けるのです。
最後に
あなたやあなたの組織が、もしいま壁にぶつかっているとしたら、それは素晴らしいことです。
それは「現状を変えようとしている」証であり、挑戦の真っただ中にいる証です。
壁を前にして、どうかあきらめないでください。
乗り越えた先には、いまより少し高いステージが必ず待っています。
そして、その壁を越えるごとに、あなたも、あなたのチームも、確実に強くなっていくのです。
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