新サービスのニーズヒアリングの方法 〜1枚のポンチ絵で突破する〜

かつての大失敗から学んだこと
私は、新規事業で大きな失敗をしたことがあります。
それは、机上のリサーチと表面的なヒアリングだけで、「いける」と思い込んで大規模な投資をしてしまったこと。
結果、ユーザーはほとんど現れず、目も当てられない惨状になりました。
あのときは、心から思いました。
「もっと、ちゃんと聞けばよかった」
「どうして、こんなことが分からなかったんだろう」
この経験は、今でも私の原点です。
だからこそ、あなたには同じような失敗をしてほしくない。
今回は、新サービスのニーズを探るための、実践的なヒアリング方法についてお話しします。
アイデアの段階では「妄想」にすぎない
新サービスのアイデアというのは、最初は“妄想”から始まります。
「きっと、こういう人が困っているはずだ」
「こういう機能があれば、絶対に喜ばれるはずだ」
これ自体は、当然のことです。
最初は、分からないからです。
でも、その「妄想」は、本当に「ニーズ」なのでしょうか?
ビジネスとしての「ニーズ」は、ユーザーがこう思うものでなければなりません。
「お金を払ってでも解決したい」
ここを見誤ると、せっかく費用と労力を注ぎ込んでも、サービスは市場に受け入れられません。
だからこそ、「作る」前の「創る」段階でのヒアリングが必要なのです。
そして、ヒアリングの質は、“資料の質”で決まります。
一目で伝わる資料がカギ
おススメしたいのが、「A4・1枚のポンチ絵資料」。
この資料は、単なる説明用のチラシではありません。
- あなたが何をやろうとしているのか
- なぜそれが必要なのか
- 誰の、どんな困りごとを解決しようとしているのか
これらを一目で伝える資料です。
そして、この資料をもとに、相手の反応を見る。
「それ、うちでも困ってるんだよね」と言ってもらえるかどうかが重要なのです。
では、どうやってその資料をつくればいいのか?
4つのステップに分けてご紹介します。
STEP1:「誰の」「何を」「どうする」
まずは、構想に至った背景を整理しましょう。
これは、ヒアリング相手に向けて話す前の、自分自身との対話です。
- どんな業種の、どんな役職の人が、どんな困りごとを抱えているのか
- その困りごとは、なぜ起きているのか
- 同様の困りごとを持つ他社の共通点(業種、従業員数、地域、取引形態など)
- その困りごとを、あなたのサービスがどう解決するのか
この段階では推測でも構いません。
ただし、推測でいいので、明確に言語化することが大切です。
ここが整理されていないと、ヒアリングしても焦点が定まりません。
STEP2:「機能」と「価値」に分けて考える
次にやるべきは、構想を「機能」と「価値」に整理することです。
| 項 目 | 内 容 |
|---|---|
| 機能 | あなたのサービスが持っている、解決のための手段・しくみ(売り手の視点) |
| 価値 | 顧客にとって、どんな困りごとが解決されるのか(買い手の視点) |
多くの人が「機能」から話しがちです。
こういうのを「供給者目線」とも言いますね。
でも、顧客がが求めているのは「価値」の方。
「ユーザー目線」と言ってもいいでしょう。
「○○システムを導入することで、情報が自動で収集されます」ではなく、
「これまで手作業で3時間かかっていた処理が、わずか10分になります」の方が伝わります。
「機能」を話してもいい。
けれども、それは「価値」が実現できるための根拠・証拠であるべきなわけです。
STEP3:中核情報を3つに絞る
ここが非常に重要です。
伝えたいことが山ほどあるのは分かります。
でも、一度に詰め込むと、相手は混乱します。
人が一度に把握できる情報は3つまで。
だから、資料には伝えたいことを3つだけに絞る。
- 一番の課題は何か
- どうやって解決するのか
- どんなメリットがあるのか
情報を削ることに勇気が要るかもしれませんが、
「伝わらない10個」より、「刺さる3個」の方が効果があります。
ちなみに、「3個」「5個」「7個」のように、奇数の方が人は興味を惹かれやすいです。
STEP4:A4×1枚にまとめる
最後に、情報をA4・1枚の資料に落とし込みます。
ここで大事なのは、「ポンチ絵」的なわかりやすさ。
- 枠で囲う
- 矢印で流れを見せる
- 色分けで構造を見せる
PowerPointでも、手書きでも構いません。
きれいなデザインよりも、**「意図が伝わるか」**が大切です。
いや、むしろ、きれいなデザインでない方がいいです。
私がよく使う構成はこんな感じです:
■顧客の困りごと(背景)
↓
■その原因(なぜ起きているのか)
↓
■このサービスでどう解決するか(仕組み)
↓
■得られる効果(変化と価値)
↓
■ご意見を聞きたいポイント
この1枚をベースにヒアリングを行います。
「こういう会社があったんですけれども、それって御社も同じですか?」
まとめ
新サービスのアイデアは、最初は妄想です。
でも、丁寧なヒアリングと、伝わる資料があれば、その妄想を現実に近づけることができます。
1枚のポンチ絵で、あなたの構想を、誰かの本音にぶつけてみてください。
そうすれば、情報の量が増えていきます。
情報の量が増えれば、必ず情報の質が上がります。
情報の量と質が増えれば、次の一歩が見えてくるはずです。
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