新規事業・新サービスを推進する秘訣は、「異端者」を歓迎すること

どの組織にもある「変えない力」
会社というのは、放っておくと「変わらない」方向に向かうものです。
人間の体が重力に従って下に引っ張られるように、組織もまた「これまで通り」の方に引っ張られる力を持っています。
これを「組織の惰性」と呼ぶことができるでしょう。
新しいことに挑戦することよりも、今まで通りを維持しようとする。
変えることにはエネルギーが要りますが、現状維持にはあまり要らない。だから、どうしても組織はその方向へ流れていきます。
どんな会社でも、「このままでいい」と思っている人の方が多数派です。
変化を起こす側よりも、それを見ている側・受け身でいる側の方が多いのです。
そして、多数派が変わらないことを望んでいれば、組織としての意思決定も自然と「変えない」方向に傾いていきます。
「みんな仲良く」が足かせになることもある
私は、会社組織のなかで、そんな組織の在り方にずっと疑問をもってきました。
「みんなで取り組む」という名目で、責任の所在を曖昧にする動き。
「心理的安全性」や「多様性の尊重」という言葉で、やらない言い訳をお化粧する。
若いころから「尖って」きた私のような人間にとっては、こういった常に自分の身を安全なところに置こうとする人たちの姿は、抵抗勢力として映ってきました。
もちろん、組織のメンバー、一人ひとりが尊重され、自分の意見を安心して言える場であること。これは理想的な職場の姿です。
しかし、一歩間違えると、こうした言葉が「変化を避けるための口実」になってしまうことがあります。
たとえば、新しいサービスを立ち上げようとする人がいるとします。
その人が少し強引にでも推し進めようとすると、
「ちょっと空気が悪くなるからやめようよ」
「もう少しみんなの意見を聞いてからにしよう」
と、無意識のうちにブレーキをかけてしまう。
本来、変化を推し進めるべき立場の人が、周囲の“空気”に気を遣いすぎてしまうと、何も起きません。
「みんなで一緒に」というのは、とても耳触りがいい言葉です。
しかし、それが「誰も傷つけない」ことばかりを重視した結果、強い主張や少数派の意見を排除する方向に向かってしまえば、本末転倒です。
成果を出すために必要なのは「異端者」
少し極端に聞こえるかもしれませんが、新規事業や新サービスを本気で立ち上げようとするなら、「空気を壊せる人」が必要です。
現場の常識に縛られず、反対意見が多くても、自信を持って進められる人。
組織内で“浮いて”しまっても、目的に忠実でいられる人。
あなたの会社にも、そういう「尖った人」はいませんか?
もしかすると、ちょっと扱いにくい人、周囲となじみにくい人かもしれません。
しかし、そういう「異端者」を孤立させてはいけません。
会社が新しいステージに行くためには、そうした“異端”が必要なのです。
異端は、革新の起爆剤です。
むしろ、そういう人こそを「ありがたい存在」として、会社が保護し、支えるべきです。
社長こそ、組織内で第一の「異端者」であれ
ただ、現実にはこうした「異端者」が会社組織のなかで立ち回るのはとても難しい。
多くの人に煙たがられ、ときに社内で浮いてしまう。
「わがまま」「独断的」「協調性がない」と評価されることの方が多いでしょう。
迫害された「異端者」は、教会の教義に忠誠を誓って大人しくなるか、その地を去るか、いずれかによって迫害を逃れる道を選びます。
そして、「異端者」が去った組織は、成長する機会を失います。
このように、現状維持の抵抗勢力が跋扈すると、組織の力は失われます。
だからこそ、この「嫌われ役」は社長が引き受けるべきです。
社長こそが、第一の「異端者」になるべきなのです。
社長であれば、方針を示し、組織に方向性を打ち出すことができます。
その立場にある人こそ、「和を乱してでも、新しいことに挑む」覚悟を示すべきなのです。
新規事業の立ち上げとは、「船の進路を変える」ような大きな舵取りです。
それは一人の社員が勝手にできることではありません。
やはり、最終的には組織のトップが道を示していく必要があるのです。
現状への「違和感」こそ、異端者の素質
もし、あなたの会社が今、「何をしても成果が出ない」「どこか停滞している」と感じているなら、それは惰性に流されているサインです。
そのときに頼りになるのは、「違和感を持っている人」です。
「このままでいいのか?」と疑問を持つ声。
「こうした方がいいのでは?」と提案してくる異端児。
そうした声に、もう一度耳を傾けてみてください。
もしかすると、会社の未来を救うヒントは、そこにあるのかもしれません。
まとめ
組織とは、本来、変わりたくないものなのです。
「変わろうとする力」は、常に少数派であり、孤独です。
しかし、その力を放っておけば、組織はじりじりと衰退していきます。
だからこそ、良心や信念をもって変わろうとする「異端者」を尊重し、支える文化を持ちましょう。
そして、最終的には社長自らが第一の「異端者」となる覚悟を持つ。
これが、新規事業・新サービスを推進していくための本質的なポイントだと、私は考えています。
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