他人の事業が価値を生む手伝いでもいいですか?

「裏方の美学」が、足かせになるとき
「うちはあくまで請負会社だから」
「元請のビジネスを支えるのが自分たちの役目」
そういう声に、私はたびたび出会ってきました。
倉庫業や作業請負業に携わる企業の多くは、クライアント企業の物流・加工・検品といった重要な工程を担っています。
いわば、縁の下の力持ち。
大きなビジネスの成否を支える、なくてはならない存在です。
けれど、私はときどき、こう思うのです。
「この力、本当に“他人のため”だけで終わらせていいのか?」
評価されにくい構造に、報われない努力が積み上がる
日々の現場を見ていると、「すごい」と唸るような工夫や改善が、驚くほどたくさんあります。
熟練したリーダーによる現場の組立て・手順の最適化。
トラブルが生じたときにも、顧客の期待に応えるために土日返上で突貫対応にあたる姿…。
しかし、私自身、こうした努力を正当に評価してもらってきたとは必ずしも思えません。
むしろ、正確にやって当然、何かトラブルがあると責任を問われる存在です。
この理由は、我々の業界の仕事は、“元請のビジネスを円滑に進めるためのもの”と位置づけられているからです。
つまり、「価値を生む主体」はいつも元請であり、我々ではない。
我々は他社が価値を生む手伝いをしていて、評価されにくい存在なのです。
自分たちの力で「価値を生む側」へシフトする
本当にそのままでいいのでしょうか?
あなたの会社が、長年培ってきたノウハウや現場力、業界知識。
それらを、自社の名前で発信し、自社のサービスとして提供する。
そうして、“価値を提供する側”に立つことはできないのでしょうか?
たとえば──
- 「作業請負で培ったノウハウを活かして、同業他社を対象に標準化・改善コンサルを提供する」
- 「空き倉庫を使って、消費者向けの撮影・出荷・販売代行サービスを提供する」
- 「非構造化されたモノを構造化する作業センターの発想を応用してデータ加工ビジネスに変化させる」
これは空想ではなく、実際に私が経験してきたことです。
すべてのビジネスが大成功したわけではありませんが__。
経営の主導権を「外」から「内」へ取り戻す
自社でサービスを立ち上げることは、新たな収益を生み出す手段であると同時に、経営の主導権を取り戻すための手段でもあります。
今までは、
- 顧客の言い値で単価が決まる
- 自社ではコントロールできないスケジュールに振り回される
- 値上げ交渉すら難しい構造で、赤字を覚悟で請け負うしかない
そんな状況が当たり前だったかもしれません。
でも、自社で事業を構築するということは、価格・サービス・顧客ターゲットをすべて自分たちで決められるということ。
自分たちのビジネスを、自分たちの意思で舵取りできるのです。
もちろん、その分リスクも背負います。
でも、自分たちの判断がそのまま成果に直結する環境は、ある意味ではとても健全です。
他人の都合に振り回され続けるよりも、はるかに自由で、やりがいがあるのです。
すでに始めている企業がある。「自分たちの力でやってみたい」と決めた人たち
私が実際に取り組む中で感じてきたことは、「本当は挑戦したい」と思っている人が、実はたくさんいるということです。
- 「昔から、いつか自分たちのサービスを持ちたいと思っていた」
- 「でも、どう始めればいいかわからなかった」
- 「会社的に、そんな発想自体がタブーで反対されると思っていた」
そんな声を、何度も聞いてきました。私もそう感じてきました。
しかし、一度「やってみよう」と決めたら、みるみる顔つきが変わっていきます。
社内の会話が未来志向になり、社員が前向きにアイデアを出すようになり、やがて小さくても成果が見えてくる。
「うちは下請けだから」と諦めかけていた企業が、「自分たちで事業をつくる側」へとシフトしていく姿を見るたびに、私は確信します。
どんな企業にも、自ら最終的に価値を届ける立場になれる可能性がある。
「裏方に徹する」ことと、「主役になる」ことは、両立できる
誤解してほしくないのは、私は「裏方をやめろ」と言いたいわけではないということです。
むしろ、裏方の仕事には、尊敬されるべきプロフェッショナリズムがある。
いま、会社を支える利益を出してくれているのも、多くの場合は裏方仕事の方です。
しかし、それが今後も利益を生み続けるかは分かりません。
そして、未来の売上を作るのに挑むならば、自ら主役になれるビジネスを目指してみて欲しいのです。
主役と裏方。これは両立可能です。
あなたの会社が、誰かのビジネスを支えながら、同時に自分たちの名前で価値を届けることは、十分に可能なのです。
あなたの会社が「価値の中心」になる日
ここまで読んでくださったあなたは、きっと、どこかで気づいているはずです。
「このまま、他人の事業を支えるだけで終わっていいのか?」
「もっと、自分たちの手で価値をつくり出す道があるのではないか?」
もしその問いが、あなたの中に少しでも芽生えているのなら。
その気持ちを、ぜひ大切にしてほしいのです。
誰かのために尽くしてきた企業だからこそ、独自の価値を生み出せる。
それを形にしていくことが、次の時代の強さになると、私は信じています。