信頼される物流会社・作業会社になるために──無形商材を売るための“情報提供”という武器

「目に見えないサービス」をどう売るか?

この記事を読んでくれている、あなたの会社が扱っているサービスは、目に見える商品ではありませんよね。
倉庫業も運送業も作業請負業も、そのほとんどが「無形商材」です。

たとえば、倉庫サービス。
保管品質、入出庫のスピード、精度、流通加工の丁寧さ——

そういったサービスの質は、営業の段階で「ほら、これがウチのサービスです」と、見せることができません。
「実際に使ってみないと分からない」という世界です。

だから、無形商材は「売るのが難しい」のです。

商品サンプルがない。目に見える品質もない。
あるのは「やります」「できます」という言葉だけ。
これでは、面識のない相手に信頼してもらうのは難しいですよね。


コンサルタントは、なぜ情報を出し惜しみしないのか?

私は、コンサルティングという仕事に携わっています。

実は、コンサルティングこそ無形商材の代表格です。
「何をしてくれるのか分からない」
「結果が保証されない」
「費用対効果が見えにくい」

こんな不安があるから、普通はコンサルタントなんて頼みません。
困っていない限り、必要とも思いません。
そして困っていても、何をしてくれるか分からない相手に、お金を払う勇気が出ないものです。

だからこそ、多くのコンサルタントは最初に「情報」を提供します。
・業界でよくある課題とその原因は何か?
・課題解決のために現場で使える方法は?
・どんな会社でどんなふうに問題を解決してきたか?

こういった情報を「先に」伝えることで、ようやく相手との信頼関係が生まれます。
信頼が生まれたとき、はじめて「相談してみようかな」と思ってもらえる。

なかには情報を小出しにして、答えを言わないまま「もったいぶる」コンサルタントもいますが、私はこういう相手を信頼できません。

情報を出し惜しみせずに、目の前の相手のために最善を提供する。
これが、無形商材を売るための基本です。


保険営業に学ぶ「リスクに気づかせる力」

もう一つ、無形商材の代表格があります。
それが保険商品です。生命保険や損害保険など、まさに典型ですよね。

保険営業の仕事は、お客様に“まだ起きていない未来のリスク”を想像させること。
・病気になったとき、家族が困らないか?
・事故に遭ったら、治療費は大丈夫か?
・自然災害が起きたら、そこから生活を立て直せるのか?
こうした「まだ目の前にない問題」を意識させることで、はじめて「保険の必要性」が伝わります。

実際、ある外資系保険会社では「C = C」という考え方を大事にしているそうです。
C(Contribuition:貢献)こそが、C(Compensation:報酬)になる。
つまり、相手に役立つ情報を提供することが、結果として自分たちの報酬につながるのだという発想です。

ここでもやはり、順番が大事で、最初に必要なのは「信頼される情報の提供」なのです。


物流業・倉庫業・作業請負業でも同じことが言える

さて、本題に戻ります。
物流業や倉庫業、作業請負業の皆さんにとっても、この「無形商材をどう売るか」というテーマは極めて重要です。

どれだけ自社の作業品質に自信があっても、それは使ってみないと相手には伝わりません。
初対面の相手に「うちは作業が丁寧です」といったところで、「他の会社も同じことを言っていた」となるのがオチです。

では、どうすればよいのか?

答えは、やはり「情報の提供」です。
営業の最初の段階で、以下のような情報を提供してみてはどうでしょうか。

  • 「外部委託倉庫を使う経営的メリットとは?」
  • 「貨物事故を防ぐための現場ルールとは?」
  • 「物流現場の品質と生産性を両立させる方法」

これらは、あなたにとっては当たり前すぎる話かもしれません。
でも、荷主企業の経営者や購買担当者にとっては「知らないけど知りたいこと」なのです。


「作業をする人」から「知恵をくれる人」へ

私がこれまで関わってきた会社でも、「情報提供型営業」に切り替えたことで、大きな変化がありました。
従来の営業では、「価格の安さ」や「対応の早さ」で勝負することが多かったのですが、
情報を提供しはじめてからは、お客様からの見る目が変わったのです。

「ただ作業をやってくれる会社」ではなく、「物流や作業管理についての知恵・ノウハウを教えてくれる会社」として認識されるようになったのです。

この変化は大きいです。
そうなると、価格だけで比較されにくくなります。
対等な立場での対話ができるようになります。
結果的に、長期的な取引にもつながりやすくなります。


情報提供は、信頼を生む最強の営業ツール

情報提供は、無形商材の営業における「最強の営業ツール」です。
モノが見えないからこそ、相手に「考えるきっかけ」や「気づき」を与えることが信頼につながります。

それは決して、難しい資料をつくるという意味ではありません。
あなたの現場での経験を、相手に合わせた言葉で伝えるだけでも十分です。

今、もし営業活動がうまくいっていないと感じているなら、
それは、あなたのサービスが悪いのではなく、「伝え方」に課題があるだけかもしれません。


まとめ:「伝える努力」が無形商材を強くする

物流業・倉庫業・作業請負業など、無形商材を扱う企業にとって、「伝える努力」は「売る努力」そのものです。

営業トークで信頼を勝ち取るのではなく、現場の知見や考え方を丁寧に伝えることで、相手から「この人になら任せてもいい」と思ってもらう。

「作業してくれる会社」から「知恵とノウハウを授けてくれる会社」へ。
その第一歩として、ぜひ「情報提供型営業」を試してみてください。

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