倉庫業・運送業・作業請負業が多重的下請け構造から脱する唯一の方法~独自サービスを作るのが大切な理由~

「縁の下の力持ち」だからこそのジレンマ

倉庫業・運送業・作業請負業といった業種は、多くの場合、「縁の下の力持ち」として最終消費者からは目に触れにくい下請け的な立場で仕事をしていることが多いですよね。
このような仕事は、なくてはならないもので、社会の背骨とも言うべき重要な仕事です。

もしも、こういった仕事が世の中になかったとしたらどうでしょうか?
ITやAIで社会の仕組みがすべて回るでしょうか?

少なくともまだしばらくの間は、現場の力を結集して見えない裏側で働く私たちのような存在がなければ、社会も経済も回っていかないという点は、誰もが否定しないことでしょう。

しかし、私たちのような「縁の下の力持ち」に対して、必要な待遇が社会的に確保されているか、私たちの自尊心を保つための敬意が払われているか、というと話は別です。

下請け的な立場であるから、常に様々な圧力に晒されます。
料金を抑制される圧力、追加料金なしに品質を上げる仕事をさせられる圧力、不利な契約条件を押しつけられる圧力です。

こういった圧力に対しては、行政や自治体が中心になって改善をする取組みがなされているため、一昔前と比べると改善してきているのは間違いないでしょう。


なぜ理不尽な扱いを受け続けるのか?

私自身、倉庫業や請負業に自ら携わる中で、数えきれないほどの「理不尽な出来事」に直面してきました。

たとえば――

  • 10年以上前に契約した低単価の契約で値上げ交渉に訪問すると、「他社にも見積もりを取る」とあっさり言われる。
  • 東日本大震災が発生した日、現場に常駐する元請けに作業の中止を進言するも「作業は続けてください」と命じられる。
  • 明らかに作業工数が多くかかるモノが入ってきたのに、従来と同一単価での取引を強制される。

支援先の会社でも、こんな声を聞きました。

  • 料金値上げに合意したのに、書面をもらえない。請求書を出しても、元の低い単価でしか振り込まれない。
  • 契約条件にない仕分け・積み込み作業をやらざるを得ず、その費用ももらえない。
  • いつの時点で発生したか明確でないのに、ダメージが発覚した貨物を売値で買い取るよう強制される。
  • 料金の値上げや条件改善で交渉に行くと、明らかに嫌な顔をされて声を荒げて対応される。

どれも他人事とは思えないのではないでしょうか?
私たちは、日常的にこういった対応を受けているわけです。

こういったことが、まだまだ実際に発生しています。
社会に不可欠な存在である私たちであるにもかかわらず、このような扱いを日常的に受けてきているわけです。

これは、なぜなのでしょうか?

理不尽を生む、「根本的な構造」

こういった圧力に対しては、行政や自治体が中心になって改善をする取組みがなされているため、一昔前と比べると改善してきているのは間違いないでしょう。
それでもこのようなことが起き続けているのはなぜでしょうか?

それは、多重的な下請けという根本的な構造が変わらないからです。

荷主であるメーカーや小売りとの間に、複数の存在が介在していることは当然のように発生しています。
元請けが全体の企画やコントロールという機能をしっかり果たしてくれているケースはまだしも、単純にオーダーと請求を中継するだけの無意味な存在になっているケースも珍しくありません。

こういうケースほど、下請けへの当たりは強くなりがちです。
自らが生んでいる価値が少ないほど、荷主からの要求をそのままストレートに下請けにぶつけてくるわけです。
この状態に耐えている会社も多いのではないでしょうか。

この根本的な構造から脱していかないと、費やした努力は砂漠に水をまくように吸い取られていきます。

「努力はいつか報われる」と多くの人が言いますが、正しい方向に努力をしていかないとあなたの会社も、従業員も幸せになれないのです。
この構造から脱しないと、他人を幸せにするために働き続けなければいけないわけです。

「根本的な構造」からの脱し方 ~独自サービスの意味~

では、どうやって多重的な下請けという根本的な構造から脱すればよいのでしょうか?
それは、何度かこのコラムでもお伝えしてきました。

あなたの会社がエンドユーザーに直接販売できる独自のサービスをもつことです。

独自サービスをもてば、サービスの内容も、料金も、その仕事を請けるかどうかも、自社で自由に決定できます。
利益率を高めに設定することで、売上規模は小さくとも十分な利益を生むことは可能です。

自社の名前・ブランドで、自社の裁量で、自由にサービスを販売していけば、すべての理不尽の根本にある多重的下請け構造から脱することができるわけです。

独自サービスを生んで育てる苦労は、乗り越えられる

もちろん、下請け的な仕事では発生しなかった苦労もあります。
大きな苦労は2つでしょう。

一つは、独自サービスをどうやって企画・構築するのかという点です。
いきなり「独自サービス」と言われても、何をやったらよいか分からないでしょう。

また、サービスを立ち上げても、営業活動・集客活動という苦労が待ち構えています。
これまでは、仕事を振ってくれる先との関係を維持していけばよかった。けれども、独自サービスをもつと、自分でユーザーを集めてこなければ行けない。
だから、例えば広告宣伝などの、これまでには手がけてこなかったような活動をやらなければいけません。

でも、あまり心配する必要はない、というのが私の結論です。

なぜならば、新サービス立上げにも、営業・集客活動にも、これまでの先人がさまざまな業界で蓄積してきた「やり方」があるからです。

あなたの会社にとっては不慣れで不安なことであるかもしれませんが、世の中の事業会社は常にこういった活動を繰り返しています。
だから、それを流用して、あなたの会社に当てはめればいいのです。
あとは、実行しながらあなたの会社なりに調整していけばいいわけです。

独自サービスの比率を徐々に増やしていく

ただ、注意が必要なのは、この動きは徐々に進めるべきだということです。
数年をかけて、少しずつ進めるべきです。

いきなり既存の仕事から転換するのではなく、「2年後に利益の25%を独自サービスから生む」といった目標を立てて、緩やかに進めていくべきです。
なぜならば、新しい取組みの「やり方」は型にはめていけばいいとしても、それでも結果に繋がらないリスクは残るからです。

目標を定めて、少しずつ、計画的に取組みを進めていくことが必要となります。

経営者にしかできないこと ~未来をつくること~

いまの売上・利益をつくるのは社員でもできますが、未来の売上・利益をつくるのは経営者にしかできません。

独自サービスの取組みが進み、結果が出始めれば、社内の雰囲気は確実に変わります。

独自サービスの営業は「はまる相手にだけ売ればいい」わけですから、あなたの会社に対する「はまる相手」の対応が違います。
敬意をもって接してくれます。

だから担当する社員のモチベーションも高くなり、「もっとやろう」と自発的に動くようになります。

そして、独自サービスで稼ぐ利益が既存事業を上回れば、すべてが変わります。
既存事業のなかから、続ける仕事と打ち切る仕事を選別することだってできるようになります。

おわりに ~尊厳を取り戻すために~

これまで、あなたの会社がどれだけの価値を提供してきたか、それを私たちは知っています。
だからこそ、その努力が“正当に報われる”構造に移行してほしいと強く願ってます。

いまの構造のままでは、苦労は積み重なるばかりです。
だから、少しずつでも構造から脱する準備を始めてください。

独自サービスは、自由な経営と社員の誇りを取り戻すための「武器」になります。

そして、それをもった会社こそが、物流業・運送業・倉庫業・作業請負業の未来を変えていく存在になるはずです。

独自サービスをもつことは、多重的下請け構造から脱して、自由な経営と自尊心を取り戻すための唯一の手段です。

一緒に一歩を踏み出しましょう。



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です